テーマ 157 部下の仕事のミスは“徹底的に厳しく追及” しない
■「厳しすぎる」ことに自分では気づかない
「上司が部下の仕事のミスなどを徹底的に追及し叱るため
部下からクレームがくる、モチベーションを低下させ
退職した人間もいる」
とのご相談を経営者の方から受けることがあります。
仕事のミスや水準の低さ、抜けなどをきちんと伝えないと
部下は分からないということで、
上司の方が部下の方に対して、1から10まで
はっきり言ってしまうのは得策ではありません。
正しいことを言えばよいというものでもありません。
正しいことであっても、相手に応じた言い方を
考えなければなりません。
一見、何を言われても飄々としているように見える人間でも、
自分でも分かっている話を、とことん追求されると、
自分を非難、否定する者として反発心、敵対心などの
別な感情が生まれる場合があります。
上司の方は、品質の良いものを顧客に納品する、
原価を押さえて利益を確保するなど、
仕事への責任感の強さから、部下にきつく
当たってしまっていることに気づいていない状況です。
■自分の言動を振り返ってみる
「心理的安全性」という言葉が最近よく用いられます。
「心理的安全性」とは、
1999年にハーバードビジネススクールの
エイミー・C・エドモンドソン教授により
提唱された概念のことで、
目的達成のためにチームのなかで率直にものがいえる
状態というものです。
2015年11月、グーグルが自社の情報サイト「re:Work」上で、
アメリカの大手通信社であるAP通信(Associated Press)との
共同研究の成果として、
下記のような「チームを成功へと導く5つの鍵」を発表しました。
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(1)心理的安全性(Psychological safety)
不安や恥ずかしさを感じることなく、
リスクある行動を取ることができるか。
(2)信頼性(Dependability)
限りある時間を有効に使うため、
互いに信頼して仕事を任せ合うことができるか。
(3)構造と明瞭さ(Structure & clarity)
チーム目標や役割分担、実行計画は明瞭であるか。
(4)仕事の意味(Meaning of work)
メンバー一人ひとりが、自分に与えられた役割に対して
意味を見いだすことができるか。
(5)仕事のインパクト(Impact of work)
自分の仕事が、組織内や社会全体に対して
影響力を持っていると感じられるか。
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グーグルのレポートでは、心理的安全性はチームを
成功に導く最も重要な要素であり、その他の4つ
(信頼性、構造と明瞭さ、仕事の意味、仕事のインパクト)
を支える土台であるとされています。
だれもが、自分は一生懸命に仕事をしていると思っています。
それなのに、いちいち自分のミス、水準の低さ、
抜けを徹底的に追及され、批判されると、部下はおどおどして、
安心して仕事に取り組めなくなる可能性があります。
部下にとっては、上記のグーグルのレポートの5つの項目を
全て失ったような気持ちになります。
このような状態は、部下の精神的な健康を損なったり、
退社していくということになりかねません。
私もこのような例を何度か拝見しております。
また、部下の方から聴くお話の中でも程度の差はありますが、
仕事上のミスなどについての
上司から指摘のされ方に関するものは多くあります。
上司の立場にいらっしゃる方は、
「部下の仕事のミスや水準の低さ、抜けなどを徹底的に厳しく追及」
していないか、
「言い切らないと気が済まない」状況になっていないか、
今一度自分を振り返って見ることが必要です。
■部下に自信と安心感を与える
面談において、部下の方に仕事上のミスなどを伝えるときは、
「先に長所やよいところを伝え」、その後、
「注意しながら、振り返りながら、考えながら仕事をすると、
今後もっとよくなる」
というような言い方をするのが基本です。
部下に「自信と安心感」を与えるのが上司の仕事です。
「心理的安全性など部下の心理を理屈として理解すること」、
そして「部下に対する仕事上のミスの注意の仕方」、
「自分の感情をコントロールすること」などを
上司として学習することが必要です。
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